記事公開日:2016/08/09

最終更新日:2017/08/15

 

目次

 

 

髪の毛のヘアサイクルとは?

人間は、胎生期に完成した毛包については一定のリズムで成長と退縮を繰り返します。

 

髪の毛というのは、ヘアサイクルによって成長と脱毛を繰り返します。そのヘアサイクルの周期は。常に成長期→退行期→休止期のサイクルを繰り返していますが、成長期と呼ばれる時期がもっとも盛んに細胞が増殖・分化する時期がになります。

 

その後、この成長期が終了し、「退行期」へ移っていきます。

 

 

成長期では、細胞分裂が活発に起こりますが退行期になると毛母の細胞分裂が停止し、「アポ卜ーシ
ス」という細胞が死滅する過程を経て、急速に細胞数が減少します。結果的に毛母は萎縮することになります。

 

 

メラノサイ卜も活性化した状態では、樹枝状突起が発達しますが、退行期になるとこの突起も退縮します。

 

 

毛包は「上皮索」と呼ばれる細長い構造体となり、さらに変性しながら上方へ退縮してしきます。

 

休止期になると、毛根は棍棒状(棍毛)の形状になります。毛包の下端はどんどん上昇していき、ついに
は立毛筋が付着する「毛隆起」という部分の近くまで達します。ここには、毛包のもとになる幹細胞が存在しています。

 

毛包下端の毛乳頭が毛隆起にある幹細胞に近づき、活性化させます。これにより再び幹細胞が目覚め、成長期が始まり、「二次毛芽」という次の新しい毛包が形成されます。

 

髪の毛の構造と成長

人間は1つの毛孔から複数の頭髮が出ていることが多くみられます。しかし、1つの毛包から複数の毛が生えているのではなく、2〜3個の毛包がグループを形成して存在しています。そして、それぞれの毛包は別々に毛周期を回っています。

 

そのため、必ず成長期毛包と成長期もしくは休止期毛包の組み合わせとなっており、マウスなどのように一斉に休止期となり毛変わりするという事はありません。

 

 

人間の髪の毛は、成長期が2〜6年、退行期が2〜3週、休止期が約3力月です。毛周期の割合は、約85%が成長期、退行期毛が約1%です。休止期については、10%と考えられています。

 

しかし、ヒトにおいても、動物と同様に成長期毛の比率は季節的に変動するといわれます。基本的には、春に高く、秋に低下するようになっています。秋ごろから抜け毛が増えるという感覚のある皆さんもいるかもしれませんが、それは科学的に正しいことで、すでに知られている季節的な毛周期の変化を感じ取っているのです。

 

 

頭髮の伸長速度は一日あたり0.4〜0.5mmと言われています。成長期の長さにより毛の長さが決まり、毛乳頭の直径と毛の太さが比例します。人間の頭髮は約10万本もありますが、このうち約1万本が休止期になります。

 

ヘアサイクルの調節

毛周期がどのように調節されているかはとても興味深い事柄です。なぜなら、毛周期のうち成長期を延ばすことができれば、毛の量は増えることになります。

 

毛周期の調節機構についても、主にマウスで詳しく調べられています。マウスでは胎生期に始まる毛包の形成が生後16日まで続き、17-19日にかけて毛包が退縮し、休止期に入っていきます(第1毛周期)。これ以後は、毛の組織が再生していく過程であり、22-23日ごろには第2毛周期に入ります。

 

 

マウスの毛包は同調した毛周期を営み、約3週間で40日程度の休止期に入ります。その後の再生は、各毛包でバラバラのタイミングになります。このような状態を「毛周期がモザイク状になる」と言います

 

成長期の開始や毛幹形成には前述の胎生期における分子群やそのシグナル伝達系が同様に重要な役割を果たしています。退行期開始に関わる分子群は胎生期の毛包形成には影饗しないことが多いです。

 

 

例えば、遺伝子発現に重要な転写因子である「ヘアレス」という遺伝子を欠損させたヘアレスマウスや、この遺伝子の異常を来したヒ卜の場合の先天性無毛症では、胎生期の毛包形成は正常ですが、生後最初の休止期に毛乳頭が真皮の下の方に取り残されるので、毛母と毛乳頭の相互作用ができなくなります。

 

 

その結果、毛包の幹細胞は袋状の構造を形成してしまい、正常に毛を作れなくなります。このため、ヒ卜では生後1年以後脱毛が起こることになります。毛周期を休止期でとどまらせる機構も毛包には備わっているようです。これもマウスをモデルにして、次第に明らかになってきています。